キャリア支援コンテンツ

大学

持続的な博士人材育成プロジェクトの基盤づくり

新潟大学

経営戦略本部 PhDリクルート室 特任教授

樋口 直樹 氏

新潟大学はこれまで、どちらかというと学部教育に力を入れてきた大学です。ですが、将来にわたる大学としての資産確保や他大学との差別化を考えると、博士人材の育成強化は喫緊の課題でした。そこで、長年北海道大学で博士人材のキャリア支援に携わってきた樋口氏の参画を得て、2020年にPhDリクルート室を開設。教員や学生の意識改革を進めながら、地方大学ならではの強みとグローバルレベルでの競争を見据えた博士人材の育成プログラムを設計し、人材や予算確保なども含めた、持続的なキャリア支援活動の基盤を構築しています。

身内の意識変革から始めるキャリア支援改革

新潟大学では、PhDリクルート室開設後の1年半の間に、ジェネリックスキルを高めるためのセミナーやキャリアマネジメントセミナー、企業とのマッチングイベントなどを設計し、開催してきました。今はこの実績と私が北海道大学で培ったノウハウをベースに「次世代研究者挑戦的研究プログラム(1)」と「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業(2)」にコンテンツを埋め込んで、学生に履修・参画を促している状況です。

新潟大学はこれまで、どちらかというと学部教育に注力してきた大学です。博士課程に進学する学生は年々減少していますし、教員や博士人材のなかでもアカデミアへの強い志向が見受けられます。

ですが、昨今のグローバル化や少子化という社会情勢を鑑みれば、この先地方の国立大学が他大学と差別化を図って生き残るためには、優秀な博士人材を育成し、彼らがさまざまな分野で活躍するための支援に力を注ぐべきなのは明白です。また、ここ10年で産業界のグローバル化が進み、研究職では博士号を持っていなければ競争の場に立つこともままならない業界が増えています。私たちは、こうした変化をまずは教員や学生に理解してもらうところから始めようとしています。

その一環として、企業研究の方法やリーダーシップなどのプログラムを組み込んだキャリア講義やジョブ型研究インターンシップなどの単位化を行いました。昨年度は修士学生が主となりますが100名を超える履修登録がありました。こうした環境を整えることで、学生と教員の意識を変えていきたいと思っています。

また、博士課程の学生同士が自然発生的に結成した院生会との協力体制も大きな力になっています。もともとお互いの研究や活動について情報交換をする場として設けられた会だと聞いていますが、中心メンバーをPhDリクルート室で特任教員として雇用し、学生の身分を持ちながら施策の策定やプログラム運営に携わってもらっています。彼らの協力により、私たちが一方的に呼びかけるのではなく、学生同士のネットワークでキャリアへの意識を高め合える仕組みをつくっていきたいと考えています。

持続的な支援プロジェクトを構築し、地場と世界を視野に入れた人材育成を

長期的な視野に立った持続的な運営体制の構築もキャリア支援には欠かせません。大学はとても属人的な組織体です。プロジェクトチームを作ってもキーパーソンが異動すると立ち消えになってしまう、補助金の期限が切れたらプロジェクト終了、というのもよくある話です。

持続的な活動につなげるためには、ある程度組織的に取り組むことと学長や理事会に確固とした意思を持ってもらうことが大切です。もっと言えば、後ろ盾となる予算や環境を確保すること。新潟大学では、PhDリクルート室の拡充予算の概算要求が文部科学省に通ったことで、当面の人件費と活動費を確保できました。加えて「次世代研究者挑戦的研究プログラム」と「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業」にも採択されたので、今後数年間は組織的にも人的にも充実した施策を展開できると考えています。

新潟大学は他大学にはない特長があります。所属する学生のほとんどが新潟県周辺地域の出身者であることと、中小ですが地場の先端技術企業が多数存在していることです。マッチングイベントに参加いただいた地場の企業からは好評の声を多くいただいており、博士人材へのニーズを掘り起こせる手応えを感じています。博士人材とコラボレーションした地域課題の解決プロジェクトなども企画できるかもしれません。今後は、地場産業界との関係性をより深めていきたいと考えています。

一方で、我が国では大学の合従連衡が進んでいて、地場に根ざした大学と世界レベルの先端研究を行う大学が協働して地域に貢献する取り組みが活性化しています。新潟大学に関しても、地場に偏るのではなく世界に打って出る研究も育んでいかなければなりません。そこで現在、大学院教育推進機構をつくって大学院全体の改革を進める計画が進んでいます。PhDリクルート室もそこに属して、大学院改革の一端を担う予定です。

博士人材のキャリア支援に取り組み始めてまだ日が浅い新潟大学ですが、少しずつ成果も見えています。昨年度のプログラム受講生のひとりが、地場の大手製造企業に採用されました。私たちも面接練習などバックアップに努めた学生だったので感慨深いものがあります。その企業は彼の採用をきっかけにマッチングイベントにも参加してくれるようになり、今後関係性を深めていけそうです。

他にも今年度の受講生の一人が先日内定を獲得しましたし、その下も院生会メンバーを中心に優秀な人材が大勢控えていますから、来年度には産業界に飛び出す人材がどっと増えるのではないかと期待しています。企業の皆さんも、まずは一度彼らに会いに来てほしいと思います。

取材 2022年3月

(1)次世代研究者挑戦的研究プログラム https://www.jst.go.jp/jisedai/ (参照 2022-03-17)

(2)科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業 https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/fellowship/index.htm (参照 2022-03-17)

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