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博士人材の幸せと価値向上のために、常識を疑い可能性を探る

北海道大学

人材育成本部 特任教授(2022年3月時点)

吉原 拓也 氏

北海道大学におけるキャリア支援の大きな特徴は「博士人材の」キャリアであると捉えていること。博士人材を「社会の発展に欠かせない存在」と位置づけ、15年以上にわたって先駆的な取り組みを展開・深化しています。一人一人の特性に合わせた施策を充実させ、支援の薄い部分を改善しながら、博士人材が幸せに暮らしながら社会に貢献できるように、あたたかさと厳しさを持って後押しする北海道大学の姿勢は、他大学の博士人材キャリア支援組織にとってひとつのロールモデルとなっています。

さまざまな背景を持つ博士人材を個別に支える

北海道大学では、もともと研究大学として博士人材を大切にする風土があり、なによりこれからの日本の発展を考えたときに、ないものをつくり出す能力を持つ博士人材の社会における活躍が欠かせないという考え方を、総長から理事、現場まで共有しています。

私たちが博士人材のキャリア支援で大切にしているのは「個性の尊重」です。理系だけでなく文系を対象としたサポート教員の配置、留学生向けプログラムの充実、ライフステージに合わせたマッチングなど、一人一人の専門分野、得意・不得意などのバックグラウンドや就職した先の人生まで配慮した支援を行なっており、個別相談は年間述べ600回に及びます。

個性を尊重した支援の結果、これまで多くのマッチングを成功させてきました。例えば、研究に没頭するあまり、就職活動の時期を逃してしまったD3の学生がいました。それでも私たちは本人の希望に沿ったマッチングを実現できました。優秀な人材であれば、多少時期がずれても採用してくれそうな企業を知っていたからです。

また、パートナーとの生活を考えると研究を続けるのは難しいと悩む学生から相談を受けることもあります。そんなときは候補企業を二人の希望する地域に絞ることで、マッチングの精度を高めていきます。

近年では、留学生のキャリア支援策も充実し始めています。一般的には日本で就職するのであれば日本語を習得すべきという考え方が主流ですが、実際には、日本語が不得意な留学生が日本で就職したいと相談してくることが多々あります。そこで私たちは、それまでほとんどないと思われていた、日本語が不得意でも採用してくれる企業を探しました。すると、予想以上に多くの企業が見つかったんです。

その後、それらの企業を招いた英語版のマッチングイベントを開催するまでに至っており、さらにこの成功体験をもとに、文系博士人材の雇用を考える企業の開拓に展開しようとしています。

文系のなかでも行動科学や社会科学を専門とする学生は比較的マッチングしやすいのですが、一人で深く思索・探究することが多い文学や歴史、哲学などを専門とする学生は、また違った特性を持っています。彼らを必要とする企業の開拓を進めつつ、社会で必要とされる人材になるためのサポートを提供していきたいと考えています。

築き上げた経験とノウハウを新たな施策に反映

北海道大学では、個別支援のほかにも多くの支援プログラムを展開しています。令和3年度で48回目の開催を迎えた企業と博士人材のマッチングイベント「赤い糸会」では、参加を希望する学生は一人一人事前にプレゼン指導を受け、一定の基準を満たさなければ参加できません。質の保証をしたうえで企業に紹介することで、企業からの評価も高まり、マッチングの成功率向上と参加してくださる企業の拡大につながるのです。さらに「赤い糸会」では、先輩が後輩に参加を進めてくれたり、大学も含めて過去に参加した卒業生が企業側から支援を行ってくれたりというエコシステムも出来上がっています。

また、北海道大学が代表機関となっている「連携型博士人材総合育成システム」コンソーシアムでは、加盟12大学のなかで120程度の育成プログラムを共有しており、都合が合わなくて北海道大学のイベントに参加できなくても、他大学の同様のイベントに参加できたり、他大学独自のイベントに参加できたりと、柔軟にカリキュラムを組むことができます。

これらの取り組みは北海道大学が長年キャリア支援を積極的に行ってきたからこその強みです。「次世代研究者挑戦的研究プログラム(1)」と「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業(2)」のプログラムにも、これまで築き上げてきた仕組みを組み込んでいく予定です。

また、新たな取り組みとして、前述の文系学生のためのプログラム強化やマッチング先の開拓に加え、これまで情報が行き届いていなかった保護者や高校教員への情報提供施策の充実による、博士人材への理解増進と未来の博士人材の掘り起こしを考えています。

研究同様、常識を疑うところから可能性を探る

研究は、まず常識を疑うところから始まります。キャリア支援も同様で、一般に言われていることを一度疑ってみる姿勢が大切だと考えています。私たちは「どうすれば博士人材が幸せになれて、社会に貢献できるのだろう」そんな思いを常に持ち、探究し続けることが、可能性の拡大や新しい取り組みにつながると考えています。

また、北海道大学では他大学との連携関係を基盤に、他大学の学生のイベント参加に門戸を開き、他大学の教員と積極的に情報交換しています。ノウハウは隠していてもいずれ広まりますから、それなら最初から公開し、連携大学全体が一緒に向上すれば、結果として日本全体で博士人材の価値を高められると考えているからです。今後も横の連携を高めつつ、北海道大学らしい取り組みを続けたいと思っています。

取材 2022年3月

(1)次世代研究者挑戦的研究プログラム https://www.jst.go.jp/jisedai/ (参照 2022-03-17)

(2)科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業 https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/fellowship/index.htm (参照 2022-03-17)

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